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最終更新日:2024年11月25日

九州地方会

2022年3月20日 第48回研究会

日時
2022年3月20日(日) 10:00~12:00
会場
オンライン開催(Zoom)
テーマ
小さな「何か」から大きな変化へ繋げる:個人と組織を元気にするコミュニケーション戦略
講師
河村 洋子先生(産業医科大学 産業保健学部 産業衛生科学科 安全衛生マネジメント学 教授)
座長
永田 智久(19回生),井上 由貴子(看護学科13期生)
参加者数
57名
報告
西村 恭子(TOTO 本社ヘルスケアセンター,看護学科7期生)

2022年3月20日に九州地方会第48回研究会をオンライン開催しましたのでご報告します。

今回は、「小さな『何か』から大きな変化へ繋げる:個人と組織を元気にするコミュニケーション戦略」をテーマに産業医科大学 産業保健学部 安全衛生マネジメント学 河村 洋子教授にご講演頂きました。
57名と多くの方にご参加頂き、関心の高さがうかがえました。

冒頭は河村先生のこれまでの様々なご経歴に触れながら、ヘルスコミュニケーションやエンターテイメントエデュケーションについてお話をいただきました。この中で、コミュニケーションは複雑適応系システムにあり、それぞれの個体がどのようなふるまいをするのかは予想がつかないこと、他の個体とのふるまいと関係があり、影響を受けあうものであることを教えていただきました。
さらに、視点・フレーミング・マインドセットの重要性について触れていただきました。様々な課題に接した時に、私たちはその課題に対する解決策を考えるのですが、それがうまくいかないと行き詰まりを感じます。しかし、その行き詰まりは私たちの視野による行き詰まりであること。捉われから抜け、もっと視野を広げていくことで、様々な対応策があることに気づけるかもしれないことについて、実例をもとにご紹介いただきました。

ここで、ポジティブ・ディビアンス(PD)についてご紹介をいただきました。PDは社会や組織を変えるためのアプローチで、コミュニティがすでに持っている知恵を発⾒し、それに基づいて⾏動することを可能にするものです。
PDは1990年代にベトナムで子供の低栄養を改善するために確立され、貧困の子供の中でも栄養状態のよい子供の家庭にある解決策(小さな何か)を見つけだし、集団の栄養状態の改善という大きな変化につなげたプロセスをお話いただきました。
PDはメンタル(思考と心)的な宙返りを伴う問題解決のアプローチであると言われるそうです。複雑な社会問題に介入するには、常識に捕らわれず、また専門性の鎧を外してまっさらな状態で関わることが必要であるとお話されていました。

また、PDは社会の大きな問題ばかりでなく、日常生活の様々なところで発見できるそうです。
アメリカのある郡でなされた研究が紹介されました。その郡では、学校の成績が悪い学校が多く、それが課題となっていました。ある成績のよいクラスの取り組みを調べたところ、授業内容に差はなかったものの、教室に入る際に教師が一人ひとりの名前を読んで声をかけ、ハイタッチをしており、生徒と教師とに良い関係が醸成されており、生徒はみなそのつまらない授業を一生懸命に聞いていたために、良い成績が得られていたのでした。
成績を上げるための取り組みに、勉強とは直接関係がないことに効果が見られた……この例は職域へのアプローチのヒントとなるように感じました。

また、コロナ渦でコミュニケーションが難しい中、「よりよい職場づくりは”ありがとう”から始まる」という記事のご紹介も特に印象に残りました。”ありがとう”という何気ない日常の言葉(小さな何か)が健康という大きな変化につながる、個人と組織を元気にするコミュニケーションとして、さっそく実践してみようと思いました。

その他、PDを具現化するツールLiberating Structuresをご紹介いただき、Spiral journalというワークで、⼼を落ち着かせ、⾃分の状態を捉えることも体験しました。盛りだくさんの内容で、あっという間の2時間でした。

ご講演頂きました、河村先生に厚くお礼申し上げます。

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