産業医学推進研究会会長
西 賢一郎
(ジヤトコ,医20期卒)
産業医学推進研究会(略称「産推研」)は、産業医学を学び実践している産業医科大学の卒業生によって運営される自主的勉強会として1989年(平成元年)に発足いたしました。2024年9月末現在の会員数は983名、正会員957名(医師714名、保健師等200名、衛生管理者・作業環境測定士32名、大学院11名)、特別会員23名、顧問3名で、地方会も全国に4拠点(関東,東海,近畿,九州)があり、地域ごとでの会員間の情報交換も盛んに行われ、毎年秋には全会員が一堂に会する全国大会を開催しています。
卒業生の数も増え、医学部、短大・専攻科、産業保健学部と産業医学を共に実践する職種も幅の広がりを見せ、卒業生には現場の産業医学実践者(産業医、保健師・看護師、作業環境測定士、衛生管理者等)をはじめ、大学や国内外研究機関の研究者、行政(国や地域)の技官、と多岐にわたる場所で、産業医学を推進すべく活躍しています。
2016年度から2018年度にかけて行った、産推研の今後の在り方を検討する委員会より、従来の産推研が目指した自主的勉強会としての目的は、この30年においてほぼ達成されており、今後は一歩前進した活動ができる会へと変革が必要であり、そこで培われた知識を社会にも貢献できる会となることが望ましいとの答申がありました。
今回、私は2019年11月の総会において、第4代目会長に承認されました。時代も平成から令和に移り、今回会長就任に当たって検討会の答申を受けとめ、その責務を全うすべく、卒業生や関係者を会員とし、「多職種共働」をスローガンに互いに切磋琢磨しながら、持っている知識を社会への還元する活動を行いたく思います。
産業医学は社会医学であり、予防医学の実践の場です。私たちが企業内・外において、積極的にフィールドに出ていくことにその価値はあると考えます。働く人々を「疾病」の観点ではなく「健康」の観点から診ていく活動です。「人と仕事の適合」はWHOの産業保健の目的にも謳われています。私たちは産業医学・産業保健の実践者として、作業環境管理・作業管理・健康管理といった労働衛生の3管理はもちろん、総括管理や労働衛生教育を現場で推進することが求められます。その実践にあたり多職種が共働して実践することは言うまでもありません。また、予防活動の効果判定や疾病原因推定などの点で産業保健活動従事者は研究者との交流も極めて重要です。早期発見や職場復帰の際には疾病治療者との連携が極めて重要になりますし、健康管理活動に臨床医学の知識も必要です。つまり全ての卒業生が産推研に関与していただくことで産業医学の推進が達成できると考えます。
産推研は産業医科大学とすべての卒業生の力を結集する会であり、卒業生ひとりひとりの知恵と力を産推研に提供いただき、先輩から後輩へとその知識の伝承が行われ、産推研の活動から得たものを会員各位が社会に還元することで、医学部同窓会や欅風会そして産業医科大学の社会貢献に役立てることを願っています。産推研は、「ALL産業医大」をキーワードに活動する会です。多くの卒業生が産推研に参加していただけることを期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。