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最終更新日:2020年9月9日

関東地方会

2020年7月4日 第79回研究会

日時
2020年7月4日(土) 15:50~17:45
会場
オンラインによるセミナー (ZOOMを使用)
テーマ
アルコール・ネット・ギャンブル依存 〜減酒外来を含めて最近の治療の動向〜
プログラム
◇講演 
 演者:樋口 進先生
   (久里浜医療センター院長
    世界保健機関アルコール関連問題研究・研修協力センター長)
参加者数
61名
報告
坂本 宣明(ヘルスデザイン株式会社,19回生)

2020年7月4日(土)に産推研関東地方会を開催しましたのでご報告いたします。

今回はアルコール、ギャンブル、ゲーム依存の最近の状況と題して、樋口進先生(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター院長、世界保健機関アルコール関連問題研究・研修協力センター長)からご講演をいただきました。
今回はコロナ禍の影響受けて、オンラインによる開催となり、参加者は各地から61名にお集まりいただきました。

久里浜医療センターは、日本で初めてアルコール依存症専門病棟を設立した日本でも有数の病院です。その院長である樋口先生に実際の臨床の現場とエビデンスについてご紹介をいただきました。

まず初めに、問題飲酒となる属性として、管理職が多いことが示され(農林業や漁業よりも多い)、職域での対応が重要であることが示されました。アルコール依存症は推計で100万人以上、治療者は5万人で治療ギャップが最も大きい病気と言われています。飲酒の効果はストレス緩和などの一定の効果はあるものの、うつ病から飲酒問題に発展したり、逆にアルコールからうつ病が誘発されます。実際に、うつとアルコールが合併すると自殺リスクが高まったり、うつからの回復の延長するなどの問題が起こってきます。うつと大量飲酒が合併した場合は、禁酒がやはり重要であり、アルコール誘発性のうつの場合でも、お酒を断酒することによって、うつが改善することが分かってきているとのことでした。

アルコール問題への取り組み方法として、医療連携、専門医療、軽症例は一般医療といったそれぞれの状況に応じた対応が大切とのことでした。依存症の治療目標は完全にアルコールを断ち続けることが最も安全かつ安定すると考えられます。ただし、アルコール依存のアプローチとして近年では、断酒の徹底だけではなく減酒という切り口も考えられています。久里浜医療センターを受診する患者さんでもアルコール依存の診断基準を満たす人は9割、そうでない人は1割という状況がわかっており、断酒と減酒のアプローチを柔軟性を持って行うことが必要です(依存症の判断:AUDIT)。久里浜医療センターでは、アルコール外来として、プレアルコホリクス外来、減酒外来、断酒外来という様々なアプローチで対応しています。ただし、重症例や身体合併症があるなどの場合では断酒がやはり必要であるとのことでした。

近年では薬物治療も進んできており抗酒薬(ジスルフィラム、ジアナミド)、中枢神経作用薬(アカンプロサート、ナルメフェンなど)があります。有効性が示される一方で、悪心やめまいなどの副反応があるため、投薬には注意が必要です。入院治療を経て断酒した方の成績は、50日後で約50%、1年後では約40%の断酒継続という成績とのことでした。また減酒外来でも飲酒量や飲酒日数は改善できるというエビデンスがあります(例:アルコール312.5g/week → 177.5g/week)。ナルメフェンの処方については、副反応に気をつけながら服薬を続けていくことで一定の断酒の成績が出ているとのとの報告がありました。

次に、ギャンブル依存については、パチンコ・パチスロが競馬等に比べて圧倒的に多いという状況が示されました。治療アプローチとして最も重要なものが認知行動療法です。そして医療だけではなく、福祉や就労支援、司法的アプローチも同時にしていく必要があります。

ゲーム依存については、中高生のネット依存が問題となっており、特にオンラインゲームが問題となっています。ゲーム依存に伴って家庭生活にも支障をきたしていく現状もあります。治療の基本として、本人が自分の意思で行動を変えていけるように援助していきます。

最後に、COVID-19とアルコール、ギャンブル、ゲーム依存との関係性について紹介がありました。現時点では論文で明確に示されているものは少ないですが、外来診療での印象としてはアルコール依存症患者の再飲酒が増加していたり、オンラインギャンブルに移行している状況があったり、ゲーム障害患者の症状が悪化している印象があるとのことでした。

講演後の質疑応答では、
・精神科のつなぎ方について(社会問題は拒否的な人が多いので健康問題に焦点を当てる。産推研会員からは、
・産業医は職場で起きている問題を「事例性」と「疾病性」の観点から評価し、「事例性」の問題を根拠に医療機関の受診を助言・指示することが多いとの意見あり)、
・ナルメフェンの処方についての法的背景、
・アルコール依存症患者の職場復帰の際の確認事項の例(断酒期間、通院状況、通所状況、服薬状況、リワークの状況など)、
・断酒会の継続についての考え方、
・ネット依存の予防方法(スマホ等を使い始める年齢が早いと依存傾向が高まるので年齢を遅くするなど)、
・依存症の生物学的メカニズムについて、
などについて多岐にわたって議論されました。

その他、産推研会員からは、アルコール依存の復職ガイドラインについては減酒というエビデンスが積み重なったらガイドライン改訂が必要ではないかという意見や、樋口先生がセンター長を務めている依存症対策全国センター)の紹介と、そこでの研究成果の「アルコール依存症予防のための簡易介入プログラム開発と効果評価に関する研究」の紹介がありました。
また、三重県はアルコール対策が進んでいる県として有名であり、アルコールに関する条例が作られているとのことです(例えば、飲酒運転で警察に捕まった人は精神科に受診しなければならない等)。

講演後は、懇親会として約20名の方がそのままオンラインで残り、アルコール依存についての深掘りや最近の職場の事例などについて、ざっくばらんにディスカッションを行い親交を深めました。

以上、今回の関東地方会では、樋口先生による貴重なご講演、オンラインによる全国各地からの聴講参加、そして熱心な議論が繰り広げられ、盛会のうちに閉会となりました。

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